プロヴァンス田舎れぽーと!海外移住×田舎暮らし

南フランスのド田舎に嫁いで子育て!毎日バタバタしながら田舎暮らしを満喫している日々のこと

【ラ・サボの事件簿】ニワトリの失踪

実は、5月からニワトリを飼っています!今日はそんなニワトリたちのお話。

消えたニワトリ

夏の爽やかな暑さが心地いい昼前、いつもと同じようにラ・サボではのんびりした空気が流れていた。そろそろ日課の卵回収にでもいくか〜と、てらてらと太陽が照りつける外に出た私は鶏小屋の中から生みたての卵を一つ回収した。

…また一個だけか。

以前は毎日二個卵を産んでくれていたのが、一羽産んでいないニワトリがいるようで、このところ卵が一個だけの日が多い。ニワトリも夏バテするのだろうか、ご飯ちゃんと食べてるかのな、と体調を気にかけつつ当のニワトリを畑の中で探してみる。うちのニワトリは高さ2mほどの斜面に囲われた窪地になっている畑に放し飼いで、日中あちこちで遊んでいるためちょっと探さないとどこにいるのかわからない。

木の下で遊んでいるマッサン(ニワトリの名前)を見つけたものの、どこを探してももう一羽のヴィオニエが見当たらない。畑を隅々まで探しても見つからない。何かのひょうしに木に登ったのかなと思い、木の上を探しても見つからない。普通ならちょっと見当たらないくらいならうろたえることはない。しかし、まぁいつか出てくるか〜と気楽に言えない理由が私にはあった。

いやな記憶が脳裏をよぎる。

夜の帳がおりつつある鶏小屋に散らばった無数の羽…黒い影…。

実は数週間前、はじめ三羽いたニワトリのうち一羽、ルサンが、隣家の犬にお食事目的で殺されてしまったのだ。その第一発見者は私だった。

夜、いつもより少し遅く鶏小屋の戸を閉めに行った際に偶然現場に遭遇してしまった私のショックは大きく、その晩グロめな処理をし終えた後はしばらく胃が痛かった。その時の胃の痛みの記憶が、どろりと重くみぞおちに落ちてきた。

まさか、味をしめたあの犬にまたやられてしまったのでは…。

一通り探しても見つからず、炎天下で探し続けるのは少し疲れたのもあってひとまず家に戻り、メディチに状況を伝えると、彼の脳裏にも同じことが浮かんだようで表情が曇った。メディチによると、その日はいつものように朝起きてすぐに鶏小屋の戸を開けた時にはちゃんと二羽いたらしい。メディチと捜索を交代し、私は息子とテラスで待機することとなった。

不安でそわそわと落ち着かない。たまに畑を見やってみてもメディチはまだ探している。しばらくして表情の硬いメディチが戻ってきて、畑を探してもいないので斜面の上に行ったかどうか探してみると言い残し、また捜索に戻っていった。

f:id:hagiyop:20180718175451j:plain

小さな捜索の手は増えれども

その話をしている時に、道で遊んでいた隣の家の女の子と遊びにきていた男の子が「どうかしたの?」と声をかけてきたので、ニワトリがいなくなったことを伝えると「じゃあ、私たちも探してあげる!」と張り切って探し始めてくれた。

ありがとう、けど…しかし…いや待てっ!

君たち犬連れてるじゃないかっ‼︎

遊びにきていた男の子の犬らしい黒い犬が、子供達についてまわっていた。この犬はたまに見かけていたのだけど、怖がりのようで近くに行くと唸り声をあげるあまり感じのいい犬ではなかった。その犬が子供と一緒にニワトリを探すというのだから、先日加害者となった犬ではないにしても、私は少し焦った。けれど、子供に向かって「きみんちの犬が、こないだうちのニワトリ殺したでしょ?だから犬と一緒に探すとかありえないし!」などと単刀直入にいやみを込めて言うわけにもいかないので、「うちのニワトリ、犬が苦手だから一緒に探さないでくれるかな〜?」とやんわり片言のフランス語でどうにかお願いしてみると、幾分か私の気持ちは伝わったようで「あーそっかー…わかった!」と言って少年のほうが犬を連れて引き返してくれた。そうして小さな捜索人が増えて、なにやら集落を巻き込んだ事件へと発展してしまった感を感じつつ、遠くに聞こえる子供と犬の声を聞いていた。

…ん?…犬の声?

結局一緒に探してるじゃん君ら…。

ひらめき

斜面の上を探し終えたメディチが戻ってきた。やはり見つからないようだ。もはや打つ手なしといった表情。子供達も見つけてはいないようで、そう広くない集落をあちこち歩き回っている。

諦めのつかない私は、メディチと交代して探すことにして畑へと向かった。

この時、もしかしたら…というひらめきに似たようなものが私にはあった。山で遭難した我が子を探す母親が、ピンと「なにか」を感じて見つけてしまうのに似た「なにか」。

先ほど探した時より丁寧に、畑の端から斜面になっている深い藪をじっと目を凝らして見て歩く。目線を上から下へと繰り返しゆっくり動かしつつ歩いていく。ちょうど半分ほどいった時、藪の中に鮮やかな赤いものが見えた…いた、ヴィオニエだ!

藪の中に見えたのはヴィオニエの立派な赤いトサカで、彼女は藪の中にじっと静かに、身動き一つ取らずにいる。キラリと光るいつもの強い目が見える…生きてる!安堵の気持ちがすーっと体を満たしていく。「ここにいたのーよかったぁ〜」とヴィオニエに声をかけ、急いでメディチに見つけたことを教えに走った。見つけたことを伝えると、メディチの顔にも笑顔が広がった。「よかった〜どこにいたの?!」というので場所を教えると「その凄く近くを何度も探したのになー」とヴィオニエが人が近くに来ても全く動かなかったことに驚いていた。

f:id:hagiyop:20180718190153j:plain

見つかったことを探し続けている子供達にも教えにいくと、やはり「どこにいたの?」と聞かれる。藪という言葉をフランス語でどう表現していいのか分からず「あの辺の草の中」としどろもどろ答えると、「ふーん」との一言。事件が終わってしまったことを少しつまらなく感じているような子供らしいリアクションをいただき、ラ・サボの小さな事件は無事幕を閉じたのだった。

秘密の巣

その少し後、ヴィオニエがとてとて畑に戻ってきたので、先ほど隠れていた場所に改めて行ってみた。見つけやすいようにマークをつけておいたので今度はすんなり見つかる。草の中の方をそろ〜っと見て驚いた、中にどっさり卵があるじゃないか!

少し興奮しながら卵を出してみると、全部で6個も産んであった。

f:id:hagiyop:20180718175924j:plain

 あ〜…そういうことか。

ここしばらく卵を産んでいないと思っていたけれど、彼女はずっとここでこっそり産んでいたのだ。鶏小屋が狭いので産みにくいのか、もしかしたら卵を取られたくなかったのかもしれない。ニワトリの個性というか、頑なな気持ちを見たような気持ちがして少しの申し訳なさと面白さを感じた。メディチとお義母さんに手のひらいっぱいの卵を見せると、思わぬ話の落ちに驚いた後、みんな最後は笑顔だった。たくさんあった卵は半分お義母さんにあげた。夏の日差しで少しだけ暖かい卵の感触を手のひらに感じつつ、こんな風に大事に産んでくれる卵をこれからも感謝していただかなくてはと思った。

その後

秘密の巣を見つけられてしまったヴィオニエは巣の場所を変えてまたどこかでこっそり産んでいる様子…暑いのにまだまだニワトリに振り回されそう。

 

f:id:hagiyop:20180718190119j:plain

割とどうでもいいニワトリの話をここまで読んでいただき感謝!